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東京高等裁判所 昭和40年(ネ)2563号 判決 1966年3月30日

控訴人

目黒信用金庫

被控訴人

大和銀行

理由

当裁判所は、次のようにつけ加えるほか、原判決と同じ理由で控訴人の本訴請求を理由がないものと認めるので、原判決の「理由」を、ここに引用する。

一、(執行裁判所における債務名義の存在)《証拠》によると、控訴人が主張する債権差押並びに転付命令申請事件につき、執行裁判所である横浜地方裁判所が、昭和四十年四月二十七日、右事件の債務名義を債権者である補助参加人に返還したことが認められ、同事件の債権差押命令が同年二月十二日に、債権転付命令が同年三月四日に、それぞれ第三債務者である被控訴人に送達されたことは当事者間に争いがない。しかして、債権差押命令の基本となる債務名義は、右命令の申請にあたり提出すべきものであるが、その提出を受けた執行裁判所において、債務名義の存在を認め、右の命令を第三債務者に送達したときは、債権差押たる執行処分は完了し、爾後適法にその取消がなされるまでその効力を持続するのであつて、債務名義を執行裁判所において保持することはその効力を維持する要件ではない。けだし、債権差押命令にあつては、これを第三債務者に送達することによつて差押の効力を生ずるものではあるが、これによつて債権の満足を受けるものではなく、その後、債権の差押債権者において取立命令又は転付命令をうるか、あるいは他の財産につき執行し、その満足をうることができるものであつて、これにより満足をえた場合に、その債務名義にこれを附記し又は債務名義を債務者に交付すべきもので、そのために執行裁判所にこれを保持させなければならない理由はなく、その都度これを附記するか、債権者に配当をなすにあたり債務名義を提出せしめたうえ債務者に交付すれば足るからである。他方、前記のように債権者において債務名義の返還を受けたことが、右差押命令申請事件を取り下げ、若しくは差押の効力を放棄したものとも認めることはできない。したがつて、執行裁判所が債務名義を債権者に返還したため差押の効力を失つたとする控訴人の主張は、理由がない。

二、(仮装債権に基づく差押)控訴人は、補助参加人のなした債権差押命令の申請は仮装の債権に基づく債務名義によるものであるから右の命令は無効であると主張する。しかし、補助参加人の債権が仮装の存在しないものであつたとしても、これは債務名義の効力に影響を及ぼすに止まり、債権差押命令が当然無効に帰することはなく、適法な手続によつて取り消されない限り、その効力を有するのである。したがつて、この点に関する控訴人の主張も理由がない。

よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから棄却。

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